フィリピン大統領府は、フィリピンの有名なニュースサイト「ラップラー」を運営し記者でもあるマリア・レッサ(Maria Ressa)氏へのノーベル平和賞受賞は、フィリピン政府への非難ではなく、これはフィリピン人の勝利であると言えるとの見解を示した。
フィリピン大統領府の報道官は、マリア・レッサ氏が本年のノーベル平和賞を受賞することが決定したことに対して、「フィリピンで検閲を受けた人はいません。この平和賞受賞は、フィリピン政府の顔に平手打ちをするものとはなりません。そもそも、この賞は、ノルウェーの民間人が作成しているものです。我々は、彼らの決定を尊重しますが、マリア・レッサ氏の刑事責任は、私たちの法廷で係争中であり、その運命については、私たちの法廷にゆだねることになります。そのため、レッサは、フィリピン人として初めてこの名誉ある賞を受賞したものであり、これはフィリピン人の勝利でもあります」との旨を述べた。
そのうえで、フィリピンにおける報道は健在であるとして、小説家でもあるF・シオニル・ホセ氏の言葉を引用して「私はドゥテルテ大統領を批判しましたが、報道の自由については批判していません。フィリピンの報道機関が生き生きとしているのは、マリア・レッサのおかげではありません。牢屋に入っている作家はいません。検閲もありません。ドゥテルテ大統領は、新聞社やラジオ局を一つも閉鎖していません。ABS-CBNの閉鎖は、ABS-CBNのフランチャイズを更新しなかった議会によって行われました。確かに彼は議会に影響を与えましたが、私が指摘したように、ABS-CBNに対する真の問題は報道の自由ではなく、金、政治、権力、そしてTVネットワークを所有するロペス家によるその乱用であります。確かにドゥテルテ政権ではジャーナリストが殺されていますが、それは過去の政権でも同じことでした。しかし、それらの殺害はドゥテルテの仕業ではなく、ジャーナリストに攻撃された小さな政治家や役人によるものです。ジャーナリストにとっての真の試練は、検閲を行い、すべてのメディアを閉鎖し、ジャーナリストを投獄したマルコス独裁政権の時に行われたものだ」との旨を述べた。