上川陽子法務大臣は、父親が反政府組織の将校で迫害を受けているミャンマーのカチン族の女性が日本で難民申請を行っている件に関して、個別の件に係る事柄には答弁は控えると述べたうえで、現在の送還停止効の制度には問題はないとの見解を示した。
4月20日に実施された法務大臣閣議後記者会見の際に、記者から「入管法改正についてお伺いします。今回の法案は、3回目の難民申請以降、送還忌避罪の対象となるのですが、会見したミャンマーのカチン族の方、お父様が反政府組織の将校で迫害を受け、2回にわたりこれまで申請を拒否され、今現在3回目の申請中です。その方は、私は命が危ないので難民申請をしています、命の心配をしないで暮らしたいだけですと訴えられていました。他の兄弟の方々は別の国に避難し、既に難民と認定されております。今回この法改正が行われれば、彼女のような難民に送還のおそれが生じ、拒否すれば罰則適用となるのですが、昨年のミャンマー難民認定はゼロというところから見ても、やはりこの法改正、問題があるのではないでしょうか」との旨の質問が行われた。
この質問に対して上川陽子法務大臣は、「質問は個別の件に係る事柄でございまして、基本的に答弁は差し控えさせていただきたいと思います。その上で、法律案の改正に関する事柄ということで、お答えさせていただきたいと思います。いわゆる送還停止効の制度でございますが、これは難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでございます。難民認定申請中でありましても、法的地位を図る必要がない者について、送還停止効の例外とすることが許容され得ると考えております。このような者に、通常法的地位の安定を図る必要はないことから、送還停止効の例外としたところでございます。したがいまして、送還停止効の例外とすることにつきましては、不相当との御指摘については当たらないと考えております」との旨の見解を示した。
その後に記者から、「法改正で強制送還をしたら迫害を受け、死に追いやられてしまうという方が出てくる可能性、この点について、改めて大臣の見解をお願いします」との旨の質問が行われた。
この質問に対して上川法相は「我が国におきまして、難民申請手続に関することにつきましては、申請者ごとに個別に判断をした上で、難民条約の定義に基づき、真に難民を希望すべき方については、難民として認定すべきということで認定をしているところであります」との旨の見解を示した。