ミャンマーでは、アウンサンスーチー氏率いる野党のNLD(国民民主連盟)が11月8日の総選挙に勝利したことにより、現在の軍事政権から政権交代が行われることとなったが、この政権交代により軍事政権が握っていた翡翠産業などの既得権益の行方に注目が挙がっている。
現在の軍事政権は、翡翠(ヒスイ)などの価値が高い鉱物の採掘は軍事政権が運営する特定の企業のみに許可しており、この採掘された鉱物を国に申請せずに加工・販売することにより不透明な利益をあげ、この利益を軍事政権に流用するなどの不透明な会計処理を行っていた。総選挙に負けたことにより、軍事政権がNLDに政権を委ねることになったが、これらの既得権益の行方は明らかになっていない状況である。一部の現地メディアからは、軍事政権がこれらの権益を手放すことはありえない、もし手放したところでNLDがこれらの権益を軍事政権と同様に牛耳るだけであり国民へ還元されることはない、との意見が述べられている。
既得権益の行方で同時に問題となるのが、これらの権益は現地住民の生活を侵害したうえで成り立っている例が多いという状況である。特に問題となるのが、これらの半ば不法に行われている採掘作業が粉塵をまき散らし、現地住民の健康に悪影響を与えている例が多数あるためである。また、現地住民の所有する土地の内部を許可なく採掘している例もある。
ミャンマー現地で活動しているNGO団体に、政権交代によりこれらの人々の生活が改善するか否かを取材したところ「現地住民達の考えは、搾取する人達が変わるだけであり、政権交代によって生活が改善すると考えている人はあまりいません。むしろ、今までも採掘作業でも現地住民への考慮が行われていませんでしたが、搾取する側が変更することにより、更に悪化する可能性があることを恐れています。」と現状を明らかにしてくれた。