国際NGO団体で世界最大規模の自然環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)は、ラオスにおける森林の違法伐採の状況を調査した結果、中国やベトナムに輸出する木材の大多数が違法伐採による木材であり、今後もこの状況が続くとラオスの森林に深刻な被害を与え、現地に住む人々へ悪影響を与えることとなる、と報告書で明らかにした。
この報告によると、ラオス政府では森林の伐採に関する厳密な管理が実施出来ていないため、輸入国から報告される木材輸入量とラオス政府が発表する輸出量においては大きな差異がみられている。2013年の場合では、ラオス政府が公式に発表した輸出量と、実際に他国が発表した輸入量を比較した場合、政府が把握している輸出量は8%程度となっている。この残りの92%のほぼ全てが違法伐採により輸出された木材とみられる。この様にラオス政府では森林伐採の厳格な管理が出来ていない状況のため、違法伐採が横行し、年々状況が悪化することとなっている。
ラオスの近隣諸国の中国やベトナムなどでは、経済成長に伴い国外から木材を安価に輸入するニーズが高まっていた。これらの国からの要望を受けて、ラオスからの木材輸出は2000年以降に増加しており、特に2009年から2014年においては8倍に増加しており、2014年の実質的な輸出金額は17億ドルとなっている。WWFが現地の状況および報告書などを調査した結果、ラオスから中国およびベトナムへ輸出される木材の大多数が違法伐採によるものであり、驚くべきことに、一部地域のおける違法伐採率は100パーセントにものぼる事態が判明した。これは木材を必要とする他国の企業およびトレーダーが暗躍したことによるものと推定される。
ラオスにおいては、違法伐採は他国と違い自国民に与える影響が非常に大きいため深刻な問題である。ラオスの一部の農村部では、森林が十分にあることにより自然に発生する山菜・茸や、貯水湖や川などから得られる魚や水、などが十分に得られることを前提として自給自足をベースとした生活様式となっているため、森林が減少すると生活に直接の影響が出てくるためである。また、ラオス政府では2020年までに森林が保全されている事を前提とした森林計画をたてているが、現実は想像を遥かに超えて自然が減少する事態となっており、早急な対応が必要となっている。
WWFはこの調査結果のまとめとして「ラオスから木材を輸入する中国とベトナムの企業は、自分達の利益のみを優先してラオスから違法伐採の木材を輸入することは即時に停止すべきである。近隣諸国の政府も、自国の利益のみを追求するのではなく、違法伐採された木材の輸入を厳格に禁止すべき法律を制定し、厳格に運用すべきである。」と声明を発表している。