マレーシアの政府系ファンドのワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)は、ケイマン諸島のファンドに投じた23.18億ドル(約2,740億円)全額を国内に償還したことを1月13日に発表した。一部の有識者から、資金の流れが不透明で国民が納めた税金が適正に使われておらず、第三者へ資金が流出しているのでは、などの批判の声が多数あがっていたため、資金の全額を償還した形となった。
ケイマン諸島は、世界有数のオフショア金融センターとして発展しており、多数の企業が租税負担の軽減を目的として、タックス・ヘイブン(租税回避地)として利用している。日本の上場企業なども租税回避地としてこのバミューダ諸島を利用しており、日本の投資残高は55兆円(日本銀行:2012年時点)といわれている。
一部のタックス・ヘイブンでは、マフィアや暴力団などの不正な団体からの資金も受け入れており、不正な行為(犯罪など)で得た資金を足がつかない形で使用するための資金洗浄(マネー・ロンダリング)にも利用されているため、問題視されている。
今回の対象となった取引は、2011年に1MDBからペトロサウジ(PetroSaudi)に貸し付けられた資金が、両社のジョイントベンチャー(JV)などが中止となったことから、この資金を一時的にケイマン諸島のファンドに預けていた。タックス・ヘイブンのファンドという性質上、この資金の流れが不透明であった。また、1MDBはマレーシア政府が100%出資を行っている政府系ファンドであり、ナジブ首相が顧問を務めているため、一部の市民団体からは第三者への資金流出を心配する声があがっていた。
近年のマレーシアではナジブ首相の求心力が低下していることからも政策への批判が強まっている。地元メディアは今回の件について、この資金償還は多数の批判が寄せられたために実施されたのであり、批判が行われなかった場合には資金償還は実施されていなかったかもしれない、と報じている。