高速鉄道計画、得をするのは中国かインドネシアか

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画像提供:インドネシア政府(建設現場の視察をするジョコ大統領)
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インドネシアの高速鉄道計画は中国政府が受注することとなったが、相次ぐ問題が発生しているため、インドネシアの野党議員達からは、このプロジェクトを無理に進めても両国にとって得をすることが無い可能性があるため建設プロジェクトを中止にするべきとの声が挙がっている。日本政府と組むより中国政府と組むことによりインドネシア政府は多大なメリットを得られるはずであったが、プロジェクトが開始されてみると問題が多発しており、当初の予想と異なっていたためである。

インドネシアの現地メディアのジャカルタポストなどでは、野党議員達は現在進めている高速鉄道建設プロジェクトを早急に停止するべきである、と声を挙げていることを報じている。この報道によると、野党議員達からは、安全性や費用などの面によりプロジェクトを進めることは危険であるため、建設が本格的に実施される前の今の段階で中止とするのが最善であるとしている。特に問題となっているのが、当初の契約では政府保証を要求しないとしていたのが、両国の公営企業からなる企業連合がインドネシア政府に保証を要求し、その後は双方がお互いに当初契約に記載されていない事項を要求している点である。

完成した鉄道資産をインドネシア政府に譲渡する条件も現在はまだ正式に決定していない。インドネシア運輸省は、完成した50年後に負債が無い状態で企業連合から政府への引き渡しを求めているが、企業連合はこの条件に応じないどころか、途中で事業が破たんした場合には、インドネシア政府が事業を買収するよう要求している。さらに、事業買収が出来ない場合には、中国政府に所有権を引き渡すことを要求している。

鉄道の運行保証期間も正式に決定していない。企業連合側から60年の運航保証を提示されているが、インドネシア運輸省は、60年では十分ではなく100年とするよう要求しているが、これに企業連合は応じていない。

建設に必要となる用地取得においても正式に決定していない。路線を敷設するエリアの土地を取得するのみならず、敷設する土地環境によっては、余分に周辺の土地も取得する必要が出てくるためである。また、周辺の土地へ与える影響の調査も十分に行われていない。

建設を実施するために必要となる認可も、現時点では予定されている140Kmの路線のうち、わずかに5Kmのみ認可が出ている状況である。インドネシアのジョコ大統領は、監督省庁に早期に調査および必要となる前提作業を実施するように指示しているが、一向に進んでいない。これは企業連合側から提出された書類が、インドネシア政府が要求している条件を満たしておらず、中国語で提出されている場合もあったためである。建設申請を認可する現場では、無責任な計画に対して承認した場合には、後に事故が発生した場合には自分達の責任が問われるため、大統領からの指示があっても容易に認可を出していない。

このように、建設を担当する企業連合とインドネシア政府の間では現時点でも契約に合意出来ていないが、インドネシア政府内も一枚岩でないのが現状である。特に国営企業相、国家開発計画相、運輸省などではそれぞれの置かれている状況が異なるため、計画を早期に進めるべきという意見と、安全性を優先するべきという意見で分かれている。

国内でも意見が分かれている状況を受けて、野党議員達はジョコ大統領に高速鉄道建設プロジェクトを中止するよう呼び掛けている。野党議員達は、中止とすることにより大統領の名誉に傷がつくために、容易に決断出来ない状況である事を理解しつつも、中国政府を発注先に選んでしまったのが間違いであったが、そもそも同区間において高速鉄道は存在すれば便利だが、必須でないことからも、建設を開始する前の今の時点で中止としてしまうのが最善であるとしている。

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