マレーシアのナジブ首相が、政府系投資開発会社の1MDB(ワン・マレーシア・デベロップメント)を利用し資金を不正に流用した疑いで、アメリカやスイスなどの海外から捜査を受け入ているが、シンガポールでも金融管理局と警察の商事調査局が捜査に協力している事を地元メディアが報じた。
1MDBとは、マレーシアの経済発展を国が主導して推進するために、ナジブ首相が自身で設立した政府系投資開発会社である。投資会社である性質上、この会社には国の税金などから多額の資金が集まる仕組みとなっており、集まった資金を成長が望まれる企業や団体へ投資することを目的としていた。しかしながら、この1MDBは有効に機能しておらず、むしろ不正の温床となっていると指摘されていた。
以前のニュース(マレーシア政府系ファンドはケイマン諸島から資金を償還)でも報じていたが、1MDBは複数の国に口座を持つだけでなく、ケイマン諸島のファンドにも資金を投じているために、資金の流れを完全に解明するのは非常に困難となっていた。特に国境を移動した資金の流れは、資金移動の際に一部金額が途中で抜き取られていても、両金融機関の全面的な協力が無い場合には、発見する事が出来ないためである。
スイスの検察当局では、1月29日付けで「1MDBに関連する複数の国有企業から、約40億米ドルが不正に流用された可能性があるため、マレーシア政府への協力を開始した。」との声明を発表していた。スイス検察の発表によると、1MDBからマレーシアの元政府職員や、アラブ首長国連邦の職員のスイスの銀行口座に資金が不正送金された可能性があり、これは組織的に実施された可能性があるとしている。詳細については、今後も捜査を続けて全容を明らかにするとしている。
1MDBの口座はシンガポールにも存在するため、シンガポールでも金融管理局と警察の商事調査局が捜査に協力することとなった。特にシンガポールでは、公平・公正な金融システムが構築されていることを謳っており、この公平・公正なシステムがあるために海外企業は安心してシンガポールに投資を実施しているため、捜査には全面的に協力するとしている。
マレーシア国内でも、この件に対する国民からの反発は非常に強く、自分達の税金が不正に使われている恐れが非常に強いとして各地で抗議活動が実施されていた。特にマレーシアでは、原油価格の下落により国内産業が打撃を受けている状況だけに、自分達の税金を無駄に使って欲しくないとして、国民からの反発が一層強まっている。