日本の環境省および経団連基金の資金提供で実施されている国際的な取り組みでUNDP・SGPの一団が、日本の静岡県の里山に訪問し、地域の伝統を守り育てるのは重要であり、先祖代々の知恵を継承しながら地域の経済・環境を維持していくことが可能であるとの見解を示した。
この訪問は、COMDEKS(SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム)として、自然資源や生物多様性の持続的保全や利用を促進することを目的とした国際的な取り組みの一環として実施されたものとなる。2022年に開始されたCOMDEKSフェーズ4では、日本の環境省および経団連自然保護基金の資金提供を受け、国連開発計画(UNDP)小規模助成プログラム(SGP)により世界15か国で実施されている。
一団が最初に訪問した先は、静岡市有東木(うとうぎ)地区にある伝統的なわさび生産地となる。この地域は、和食に欠かせない、わさびの栽培が400年以上前に始まった、わさび栽培発祥の地であり、世界農業遺産(GIAHS)にも認定されている。自然の渓流に沿って造られた石畳式のわさび田では、化学的な投入物はほとんど必要なく、多様な生物が生息する豊かな生態系を生み出し、この環境は多くの水生生物にとって理想的な餌場・繁殖地となり、結果として鳥や小動物も引き寄せられるとしている。
続いて訪問した先は、同じくGIAHS認定を受けている掛川市の日本茶畑となる。掛川は日本有数のお茶の生産地であり、150年以上の歴史を持つ「茶草場(ちゃぐさば)農法」が現在も受け継がれている。この農法では、茶畑の周囲に草地を残して“野生”の状態に保つことから、そこに生きる動植物の生息地が自然と確保されており、「茶草場」で刈り取られた草は堆肥や天然の肥料としてお茶づくりに活かされている。
SGPナショナル・コーディネーターからは、「今回の日本の里山視察を通じて、農地を持続可能に管理することの利点や、地域の伝統を守り育てることは、ここでも大変重要であることを深く実感できました。それが実現できるのは、地元コミュニティの人々の献身があってこそです」「自然生態系を尊重・保護し、先祖代々の知恵を継承しながら、現代的な手法も取り入れて地域コミュニティの経済的・環境的レジリエンスを高めることが可能であるということを、日本の実例で目の当たりにすることができました」などの旨の感想が述べられた。