財務省が実施しているランチミーティングにて、移民の犯罪率が高いとは言い切れないと主張していた東京大学の教授が、移民の受け入れは経済に良い影響を与え、福祉目的で移民してくる事例は少ないなどの講演を実施していたことが明らかになった。
財務省の財務総合政策研究所では、財務省内外から様々な知見を有する実務家や研究者等を講師に招き、幅広い知識や情報を得る場として「ランチミーティング」を開催している。昨年の10月3日には、東京大学社会科学研究所の准教授が、【移民と日本社会-データで読み解く実態と将来像】とのタイトルで講演していたことが明らかになった。
この講演では、移民受け入れに関する、全般的な国の経済状況への影響に関しては、【移民の受け入れは全体的には経済に正の影響になるのではないか】【高技能移民の受け入れによる影響は、イノベーションの進展に起因している。高技能移民の受け入れ増加に伴い、特許の出願率も増加する】【日本大学の教授らの研究チームが行っている日本のデータの分析では、賃金への負の効果は確認されておらず、影響する際には賃金を高めるという知見が示されている】【現状では移民が日本人労働者と直接競合する可能性は低いと考えられる】【日本でも移民を雇用してコストを削減することにより、企業が利潤をあげ、事業を継続・発展させることが可能になっていると考えられる】などとしている。
社会保障への影響に関しては、【移民が福祉を目的として移動する事例は少なく、多くの場合は労働意欲を持って移住していることを示唆している】【最初から依存目的で移住するケースは少ないと考えられる】などとしている。
まとめとして、【日本では移民の受け入れが労働環境を悪化させるという結果は出ておらず、指摘されているネガティブな影響は低技能移民の受け入れによる技術発展の抑制にとどまる】【移民が日本で十分に力を発揮できるようにするための社会の仕組みを考える必要がある】などとしている。
なお、今回の講演を実施した東京大学の教授は、【移民の犯罪率は0.4%程度で、日本の0.2%を上回っているが、これをもとに移民の犯罪率が高いとはいえない】【配偶者や子どもの存在が地域活動への参加など、地域でのつながりを作る一つの要因となっており、川口でフィールドワークをしていないが、実際に家族を連れての移住が広がっているのであれば、関係の変化は期待できるのではないか】などの見解を、書籍や朝日新聞系のメディアでのインタビューなどで述べている。