兵庫県の産業労働部国際交流課地域国際化班は、「ひょうご多文化共生社会推進懇話会報告(案)」に関する県民意見提出手続(パブリック・コメント手続)を12月22日から開始した。パブコメの状況によっては、この案がそのまま採用される可能性がある。
兵庫県では、地域の発展に向けて、グローバルな多様性(ダイバーシティ)を活かして、県民が共に繋がりあって活躍する包摂性(インクルージョン)に富んだ多文化共生社会を実現するため、「ひょうご多文化共生社会推進懇話会」を設置し、「ひょうご多文化共生社会推進指針」の改定についての意見を聴取していた。今回、懇話会から報告(案)の提出が行われたため、報告(案)について、広く県民からの意見・提案を取り入れ、内容の充実を図るため、パブリック・コメント手続きを実施する。
4つの行動目標「多文化共生の意識づくり」「多様な文化を理解し活躍できる人づくり」「暮らしやすく働きやすい生活基盤づくり」「誰もが参加できる活力ある地域づくり」が定められており、それぞれの目標ごとに「施策目標」「主な施策」がまとめられている。また、5つの重点施策として、「外国人生徒の教育機会の保障」「外国人材の地域社会への参画の推進」「医療通訳体制の充実」「外国人県民の人権尊重」「災害・感染症に対応する体制整備の推進」も挙げられている。
施策目標【多文化共生の意義の普及啓発】では、『地域住民や企業、NGO等に対して研修会等を実施』『県海外事務所等を活用して多文化共生の動向を把握』『多文化共生の実現をめざす教育を推進』『ヘイトスピーチ等にかかるインターネット上への差別的な書込みに対するモニタリング実施』などを行う。
【外国人児童生徒等への日本語教育・母語教育等の推進】では、『小中学校で効果的な日本語指導や多文化共生教育の在り方を実践研究』『母語教育及び母国文化の情報発信拠点への支援』などを行う。
【学校での受入れ体制整備・学習機会の確保】では、『「子ども多文化共生サポーター」の派遣』『外国人児童生徒等の就学支援、日本語指導や進路指導に関する情報提供・教育相談の実施』『子ども多文化共生コーディネーターによる外国人児童生徒等への支援の充実』『外国人生徒等が通える夜間中学校を充実』『経済的理由により、就学に困難がある生徒に対する支援』『外国人学校の運営支援、児童生徒など地域との交流活動を支援』などを行う。
【兵庫発グローバル人材の育成と地域間交流の推進】では、『学校現場において異なる文化を理解する意欲・態度を育成』『海外からの視点での多文化共生社会の推進』『行政情報・生活情報の多言語や「やさしい日本語」での発信を充実』などを行う。
【住宅確保のための環境整備】では、『外国人であることを理由とした入居拒否等の解消に向け、人権や多文化共生について啓発』『入居拒否等人権侵害のおそれのある場合、法務局等関係機関へ迅速につなぐなど対応を推進』『安定した住生活の確保のため、外国人の入居を拒まない賃貸住宅の情報提供を促進』『生活上のルール・習慣等の情報提供等のモデル地域での取組みを支援し全県に普及』などを行う。
【雇用就職をめぐる支援と環境の充実】では、『企業相談窓口を充実し、外国人雇用を促進』『職場内の多文化共生の意識づくりを促進』『就労に必要な日本語教育の充実を推進』などを行う。
【感染症予防への意識啓発と感染症に対応する体制づくり】では、『感染症予防にかかる情報を多言語や「やさしい日本語」で提供』『インターネット等への差別的な書込みをモニタリングし、抑止効果を促進』『外国人学校の再開時における感染症対策に必要となる取組みの支援』『外国人学校の遠隔授業環境整備の取組みの支援』などを行う。
【外国人県民の地域活動への参画促進】では、『行政・国際交流協会、外国人コミュニティ・支援団体等の体制充実を推進』『外国人コミュニティ・外国人支援団体等から意見を聴取する機会を確保』『交流イベントを支援し、外国人県民の地域活動への参加を促進』などを行う。
【多文化共生に取り組む人材の育成】では、『研修等を通じて外国人県民支援のリーダーとなる人材育成を推進』『地域の多文化共生を支えるボランティアを育成』『多文化共生を推進する外国人コミュニティ等への支援』などを行う。
この報告(案)は、パブリック・コメントに付されたのち、さらに同懇話会において検討が行われ、最終報告に取りまとめられる。兵庫県は、この最終報告を受けて、「ひょうご多文化共生社会推進指針」の改定を行う。
なお、兵庫県によると、日本の総務省は、令和2年9月に「地域における多文化共生プラン」を改訂し、地域における多文化共生推進の新たな方向性を示したとしている。