自民党政権のもとの日本放送協会(NHK)では、受信料引下げの原資とするために剰余金を積み立てて「還元目的積立金」としているが、この積立金が受信料引下げに使用されず、関係のない官民連携事業に使用される可能性があることが明らかになった。
自民党政権では、「放送・配信コンテンツ産業戦略検討チーム」を設立し、会合を定期的に開催している。この検討チームは、放送コンテンツ産業の更なる振興、産業競争力の強化に向け、「放送・配信コンテンツ産業の振興に向けた課題と対応策」「官民連携の在り方」などを集中的に検討するために設けられたチームである。構成員の主査は青山学院大学総合文化政策学部の教授が務めており、オブザーバには日本放送協会、一般社団法人日本民間放送連盟、株式会社 TBS テレビ、株式会社テレビ朝日などが名を連ねている。
今回は、第6回目となる会合が6月19日に開催されていた。議事次第は、「取りまとめ(案)」「意見交換」となった。この会合で使用された資料によると、『放送・配信コンテンツ産業の競争力強化に向けた官民の推進体制』に関して、【NHK還元目的積立金を活用しファンディング機関を設け、民における具体的な施策を実施。また、総務省の予算事業とも重複がないように連携を図る】と案が提示されていた。
なお、NHKでは、令和2年10月の検討分科会において、経営効率化による剰余金を確実に視聴者・国民に還元する仕組みの明確化が課題であるとし、剰余金を積み立て、「受信料の値下げの原資」を明確化するため、受信料還元に関する科目の設定を要望していた。その後、この要望が受け入れられ、放送法の一部が改正された。この改正では、【NHKは、毎事業年度の損益計算において生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額の一定額を還元目的積立金として積み立てるとともに、積み立てた額は、受信料の額の引下げの原資に充てなければならないこととする】とされている。