上川陽子法務大臣は、多文化共生社会の定着については更に推進していくとともに、複数回の難民申請の抑制や強制送還を拒む非正規滞在者に刑事罰を科すことに反対する意見があることに関しては、様々な方策を組み合わせてパッケージで問題の解決を検討していく方針であることを明らかにした。
10月2日に実施された法務大臣閣議後記者会見の際に、記者から「法務省が来年度予算の概算要求を発表しましたが、特に重点を置いているところについて教えてください」との旨の質問が行われた。
この質問に対して大臣からは、「多文化共生社会の定着や法務行政の国際化などによる、経済再生の加速化に向けた取組については、更に推進していきたいという観点から、重点事項として、活力ある日本経済の実現のための法的基盤の強化を掲げております」との旨の見解が示された。
その後に、記者から「『収容・送還に関する専門部会』の報告書に対して、全国各地の弁護士会や市民団体から内容に反対する意見や会長声明が相次いで出されています。いずれも複数回の難民申請を抑制して送還停止効に例外規定を設けたり、帰国できない事情があって強制送還を拒む非正規滞在者に刑事罰を科したり、あるいは仮放免の運用を厳格化する方向での入管法改正に、反対する意見などばかりです。こういう状況の中で、菅政権におかれましては、多文化共生社会の推進や法務行政の信頼回復を掲げていらっしゃるわけですが、今回の入管法改正をどのような方向で進めるのか、国際人権基準に則した受入体制の改善なのか、あるいは難民申請者や日本に生活基盤を持つ非正規滞在者を排除する方向での入管法改正なのか、大臣の基本的な考えをお聞かせください」との旨の質問が行われた。
この質問に対して大臣からは、「出入国管理行政については、退去強制令書の発付処分を受けた外国人による送還の忌避、これに伴う収容長期化の問題が生じているのに対して『収容・送還に関する専門部会』において、十分な御検討をいただき提言をいただきました。この内容は、様々な方策を組み合わせ、パッケージで問題の解決を図ろうというものであると承知しています。私としても、この提言を踏まえた法改正・運用改善について、出入国在留管理庁に必要な指示を行い、しっかりと対応してまいりたいと考えております。コロナ禍ですが、出入国在留管理の在り方については、様々な形で先ほど御指摘のあった多文化共生社会の実現という大きな方向性の中で、しっかりと取り組むべきことであると思っておりますので、出入国在留管理庁に必要な指示を行いながら、私も積極的に関わっていきたいと思っております」との旨の見解が示された。