日本学術会議公開シンポジウム『Withコロナの時代に考える人間の「ちがい」と差別~人類学からの提言~』が10月11日に開催された。
この公開シンポジウムは、『新型コロナウィルスのパンデミックの中、社会の各所で他者や他集団に対する差別や排除が表面化したとして、象徴的な出来事として米国での黒人暴行死をきっかけにブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が世界中に広がりましたが、このような差別は全ての社会に潜む、私たち一人一人の問題です。この古くて新しい問題に、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか?人間の「ちがい」とは何か?本シンポジウムでは、こうした人間の「ちがい」と差別をめぐる問題について、文理両サイドの人類学者が一堂に会し、考えます』という旨の趣旨で開催された。
今回のシンポジウムの主催は日本学術会議地域研究委員会、文化人類学分科会、多文化共生分科会基礎生物学委員会・統合生物学委員会合同自然人類学分科会として開催された。なお、後援は日本文化人類学会、日本人類学会となる。
プログラムは、山極壽一(日本学術会議前会長)からの開会あいさつ、第一部講演「横浜中華街から考えるゼノフォビア(早稲田大学)」「健康希求行動が生み出す差別(長崎大学)」「感染症と人類−ゲノム研究の視点から(国立国際医療研究センター)」「BLM運動から考える身のまわりの人種差別(京都大学)」「差別をどう乗り越えるのか−人類史の視点から(東京大学)」、第二部パネル討論、閉会、となっていた。
このシンポジウムの中では、「差別を乗り越えるには、無知が一番怖い。国という幻想が差別を創出している、国という視点からもっと自由になる必要があると思います。ちがいを、もっと尊重し感謝する」「感染症の個人差・集団差は、病原体とヒトとの多様性がともに関わって来た歴史を反映しているため、多様性を保つ重要性がある」「差別低減の具体的プランの例としては、集団間接触、トレーニングと教育、安心・安全な議論の場を確保する」「相手に対する無知は差別の温床、ホモ・サピエンスは共通性が高い」「ヒトが多様な属性の束から成り立っていることを徹底的に認めることから始める」「差別はなくならない。人間は差別をする、同じように犬や猫も、彼らは彼らなりの差別をしている。そのため、残念ながら差別はなくならない。なくすには、究極的な考えだが、世界中の人がみな同じ顔(クローン)になればよいのではないだろうか。それが無理なら、差別を低下させる取り組みをすべきでは」などの見解が示されていた。