タイの憂鬱【コラム】
先日、タイでは下院総選挙が行われました。3月25日に非公式の選挙結果が出され、主な党の獲得議席は概ね次の通りでした。
タイ貢献党:135※タクシン派
国民国家の力党:119※軍政権派
新未来党:87
民主党:55※反タクシン派
正式な選挙結果については5月中旬頃になるようですが、反タクシン派の民主党が大幅に議席数を減らす事になりそうです。タイではタクシン首相が誕生以来、政治的な混乱が続いてきましたが、その混乱は経済成長にも影響を与えています。現プラユット首相は軍政のリーダーですが、以前のようには国王のお力に頼る事ができなくなっていると思われます。したがって新しい政権は経済発展に力を入れる必要がありそうです。
私は25年ほど前からバンコクを180回ほど訪れていますが、タイではバンコクへの一極集中が極端に進んでいます。何しろ首都のバンコクには600万人の人々が住んでいますが、第二の都市のノンタブリはバンコクに隣接した衛星都市で人口も30万人とバンコクの5%程度に留まっています。ちなみに日本人に馴染みの深い北部の都市のチェンマイ市は18万人です。
一極集中が進むと都市部(バンコク)と地方での様々な格差が生じてきます。教育面、就職面、収入面、医療面等多岐にわたります。こうした格差が社会の不安定化につながります。例えば収入面での格差は富裕層と貧困層を生み出します。貧困層の人々は様々な不満を持ち始め、極端な思想に走りやすくなります。また富裕層の人々は経済発展と共に益々資産を増やし社会の多くのシステム、サービスを独占するようになります。その結果、都市部に住んでいる人々にも格差が生じ少数の富裕層と多数の貧困層という構図となります。
いまアジアのいくつかの国はこのような状態となっています。日本でも最近は同じような格差が生じていると私は考えています。このような格差が社会的な不安定を生むのだとすれば、日本にとっても大きな問題なのではないでしょうか。
さて、それではどのようにして解決をしていけばいいのでしょうか。私は選挙人である我々一人、一人がしっかりとした選択を行う必要があると信じています。日本人、一人、一人がしっかりとした考えや信念を持ち日本の国をどのようにしていきたいのかを具体的に意思表示していく事が必要なのではないでしょうか。もちろんその事はタイの人々にも言える事だと思います。”微笑みの国”と言われているタイの人々が心から安心して生活を続けられるように、我々日本人も一緒に考える事が真の意味でのグローバル化なのではないでしょうか。”アジア人は皆、兄弟!”を合言葉にしたいですね。
【著者プロフィール】
三浦純一:1950年生まれ
フォーバル・ベトナムのシニアアドバイザーとして2年。主にホーチミンでの現地法人立上げ、工業団地進出支援。
サイエスト株式会社 海外進出支援サービス 「グローバル顧問」所属
http://www.globalkomon.com