タイのラーメン(バーミーナム)【コラム】
私は以前、無線通信機器メーカーで10年ほどお仕事をさせていただいた事があります。
その当時、タイには電話のない町や村が2,000以上ありましたが、それらの町や村に電話を3台(3回線)ずつ設置するというプロジェクトがありました。そのプロジェクトは無線システムを使用した電話回線を構築するという画期的なプロジェクトでした。ヨーロッパの無線方式と日本の無線方式との競争となった訳ですが見事に日本の無線方式が採択され、私が所属をしていたメーカーが本プロジェクトの約半分のエリアを担当する事になりました。
私は現地コーディネーターとして約2年間バンコクに駐在をし、タイの田舎町を巡るまたとない機会を得ることができました。ウタイタニ、ナコンサワン、スコータイ、ピチット、チェンマイ、チェンライ、スラタニ、トラン等多くの市町村を回らせていただきましたが、それぞれの街でバーミーナム(「以下バーミー」日本のラーメン)の味が微妙に違っているのです。後日、イサーンと呼ばれる東北部のウドンタニやコンケーン、ウボンラチャタニの街も訪れバーミーを食べてみましたが、やはり味はそれぞれでした。街ごとに味が違うと言う事がむしろ自然なんだという事を私は当時忘れていたのかも知れません。
東京には多くのラーメン屋さんがあり競って新しい味を創作し、次々に話題店が誕生しています。味の種類が多様化されているという事ではタイと同じ状況だと思います。唯一違うのは味の歴史だと私は考えています。バーミーは30バーツ(日本円で100円程度)ほどです。まさしくタイの国民食です。バーミーの商売を始めるのも比較的に簡単です。もちろん路上でもお店を開けますし、ほんの少しの資金で営業する事ができます。そんな訳ですから街中いたるところにバーミーのお店があります。もちろん私はどこのお店のバーミーが美味しいのかわかりません。地方に出かける時は車で出かけていましたが、運転手さんがとても事情通の方でここの街ではこのお店のバーミーが美味しいと案内をしてくれました。有難いですね。
アジアの国々ではどこの国も同じように首都に人々が集中します。タイでは田舎から多くの人達がバンコクへ出てきます。そして仕事を見つけ一生懸命働いて、田舎へお金を仕送りします。田舎で食べたバーミーの味とは少し違ったバーミーを食べながら必死で頑張り続けます。バンコクの街で偶然にも田舎のバーミーの味に似たバーミーに出くわすことがあります。懐かしいでしょうね。そして何日か通っているうちに、店主が自分と同じ田舎の出身なんだと知りますますそのお店に通うようになります。こうして大都会の片隅でほのぼのとした交流が始まります。バンコクでもジャカルタでもマニラでも同じような出逢いが毎日あるのではないでしょうか。私は青森の出身ですが木枯らしの吹く寒い日に青森の煮干しラーメンのお店を浅草で見つけた事がありました。その時私は黙ってラーメンをすすっていました。青森を思いっきり想い出しながらひたすらラーメンをすすっていました。
【著者プロフィール】
三浦純一:1950年生まれ
フォーバル・ベトナムのシニアアドバイザーとして2年。主にホーチミンでの現地法人立上げ、工業団地進出支援。
サイエスト株式会社 海外進出支援サービス 「グローバル顧問」所属
http://www.globalkomon.com