ミャンマー総選挙は国の発展を阻害する恐れ―選挙を望まない国民も
ミャンマーでは翌日(11月8日)に総選挙が実施されるが、今回の総選挙はミャンマー国民の総意に基づき実施されているわけではなく、海外からの圧力で強引に実施されたものであるため、総選挙を実施した結果として、様々な分野で混乱を招き、従来の生活様式が崩れ、少数民族との紛争が再発するなどの事象を呼び起こし、国の発展を阻害する可能性が高い、とミャンマーで寺院と孤児院を運営する経営者が匿名を条件にインタビューに応じた。
ミャンマーで寺院と孤児院を運営するミャンマー人の経営者が、今回の選挙に対して懸念があるとして、匿名を条件に弊社のインタビューに応じた。
―総選挙に関しては、率直にどの様に感じていますか?
「私たちは現時点での海外メディアなどによる報道に違和感を感じています。特に海外メディアは現地の住民達にインタビューすることもなく、無条件に軍事政権を批判し野党を称賛する報道を行っており、これはフェアでは無いと感じています。今回の総選挙の実施を熱烈に支持しているのは一部の野党の支持者達だけです。」
―国民の大多数が野党を熱烈の支持しているわけではないのですか?
「はい。大多数の国民は与党・野党のどちらかに肩入れしているわけではなく、どちらに投票するかは非常に悩んでいる人達ばかりです。大多数の国民は、安全・安定したより良い生活・政治が行われることを希望しているだけであり、決して現時点での軍事政権を即時に政権から引きずり降ろそうと思っているわけではありません。もっと言えば、選挙に行かない人も多数出てくるのはと思っています。」
―現在の軍事政権が必ずしも悪いというわけではないのですか?
「確かに、現在の軍事政権は選挙によらずに選ばれた者達であり、これは紛れもない事実です。この者達が国の利益を不当に感受していることは改善すべきであるとは感じています。しかしながらも現在の政権でも、国民がそれなりの生活を行えるだけの最低限の政策を実施してきており、少数民族との紛争も段階を踏みながらであるが解決してきていることからも、これらの活動は評価すべきだと思います。」
―選挙の結果、少数民族との紛争が再発する可能性があるという事ですか?
「はい、選挙というのは多数の意見を元に少数の意見を抑えるということであることからも、ミャンマー国内で発生している少数民族との紛争も再発する可能性があります。短期的には今の軍事政権が対応する方が少数民族との紛争は抑えられると思います。」
―という事は、選挙を行わずに、今後も軍事政権の支配が続く方がよいという事ですか?
「いえ、そういうわけではありません。公平な選挙はいずれは実施しなくてはいけないと思いますが、今回の選挙は明らかに海外からの外圧で行われているもののため、全面的な賛成が出来ないという事です。国民の多数が今すぐに本当に改革を望む選挙を望んでいるのか?という点を考慮して頂きたいです。」
―海外から意見を言われるのは迷惑という事ですか?
「いえ、そういうわけではありません。特に海外からの支援はありがたい事であり、感謝の言葉しかありません。これらの支援を受けているからこそ、私達のような孤児院の経営が成り立っているのでとても感謝しています。しかしながら近年では、ミャンマーの実態を知らない一部の海外の人権派と名乗るNGO団体がミャンマーに乗り込んできて、自分達の考えが絶対に正しく万能でありミャンマーはこの考えに従うべきだと振る舞う人達がおり、この活動に違和感を覚えます。この様な人達はミャンマーへの善意により行動しているわけではなく、自分達の売名行為のためにこの様な活動をしているのではと疑ってしまいます。」
―その様なNGO団体も今回の選挙に関与されているという事ですか?
「はい、彼らの一部は、公平な選挙を行うことを目的としているわけではなく、政権交代をさせる事を目的としているとしか考えられない行動をしています。政権交代を前提としている活動は、その時点で公平な活動とは言えないと思います。繰り返しになりますが、この様な活動をしているのは一部の人達・団体のみで、大多数の善意に基づく活動をして頂いている人達・団体には、感謝の言葉しかありません。」
―特に懸念していることはありますか?
「特に私が懸念しているのは、民主主義という名のもとに外資系企業がミャンマーに参入し、海外のルールをミャンマーに持ち込み、ミャンマーの従来の生活様式を崩壊させることを懸念しています。この国では、仏教の教えに基づいた助け合いの精神が残っており、これによって貧困に陥った人々も最低限生きていける環境が維持できています。いわゆる欧米化することにより、この精神が崩壊してしまうのではと感じています。」
―具体的にどの様な事が発生すると考えていますか?
「私のような孤児院を経営している人間にとっては、助け合いの精神に基づいた支援を近隣住民から受けています。この考えが無くなってしまった場合には、孤児院の経営が出来なくなるため、危機感を覚えています。また、孤児に限らず老人や貧困にあえぐ人達を見捨てる事が多発し、犯罪が増加するのではないでしょうか。これらの事が発生する結果として、総選挙を実施したことにより逆に国の成長が阻害されるのではと考えています。」
―最後に一言お願いします。
「今回の結果がどの様になるかは分かりませんが、従来の助け合いの精神が崩壊せずに、今までの安全な暮らしが崩壊しない事を祈るだけです。また野党が政権を握った際には、善政を行うことを期待します。野党が政権を握った瞬間に、現在の軍事政権と同様の事を行う可能性もあるわけですから。また、野党は今までに政権運営を行った実績が無いことからも、理念だけあってもうまく国家運営が出来ないという可能性もあるわけです。」