インドネシア進出の日本企業の取引が厳格化―中国の高速鉄道受注により

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インドネシア高速鉄道計画を中国政府が受注する事となった事に伴い、インドネシア政府高官は日本からの投資が冷え込むことを懸念しているが、インドネシアに進出している日本企業に今回の中国政府の受注についての影響をインタビューしたところ「直近での影響はないが、今後は新規開始するプロジェクトおよび新規顧客との取引は慎重にせざるを得ない」と匿名を条件に語った。

この企業の購買担当者によると、発注社(ユーザー企業)および提供社(ベンダー企業)の関係は、日本と海外との区別なく、インドネシアにおいても日本と同様の進め方で実施している。プロジェクトの進め方として、「調査フェーズ」「要件定義フェーズ」「設計フェーズ」「建設フェーズ」「運用フェーズ」などと分けてその都度受発注行うのが正式かつ安全なやり方である。しかしながらこの手順をとるのは両社にとって負担となるため、最終的な建設フェーズおよび運用フェーズの受注を前提として、プロジェクトを担当する担当者の判断により、お互いの信頼関係を元として、曖昧な契約内容での調査フェーズの受注および無償での調査を行ってしまうことは多々ある。特に調査フェーズを単独で実施することは、単独のフェーズのみでの採算を考慮して実施するため、結果としてコストが高くなるため発注者は嫌う傾向が強い。
しかしながら通常の案件では、「調査フェーズ」などの初期の段階を受注した企業は他社に先駆けて状況・実態を把握することが可能となり発注社との信頼関係が構築出来るため、他社が途中のフェーズから割り込んできても重要な「建設フェーズ」「運用フェーズ」を受注出来る可能性が高くなることからも、「調査フェーズ」を無償および安価に受注する事はよくある話であり、インドネシアを始めとした海外でも同様の状況である。

インタビューの最後に今回の件が自社に直接的な影響があるかを確認したところ、今回の中国政府の受注により既存のプロジェクトには影響はないと考えているが、今後進めるプロジェクトに関しては、受注したフェーズごとに渡す技術・ノウハウなどの知的財産の取扱に関する内容の記載の確認および改定を行い、今後新規に取引を行う会社とは慎重にならざるを得ないであろう、と回答した。