ASEAN経済共同体設立により各地域の伝統工芸品が衰退

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ASEAN10カ国(マレーシア、ミャンマー、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)内において、経済面における人・物・サービス・金などの移動が自由に行う事が出来る「ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community:AEC)」の設立が2015年末に予定されており、世界中から注目を浴びている。しかしながら、このアセアン経済共同体が設立された場合には、各地域における伝統工芸品が衰退する恐れがあることを各国政府は懸念している。

このAECが設立された場合には、アセアン地域内での製造が最適化・効率化されるため、それぞれの国において得意とする産業が発展する可能性が高いが、この発展に伴い他国における同産業が衰退する可能性が高いというリスクをはらんでいる。特に各国政府が懸念している産業は、各地域において手作業などで作成されている伝統工芸品である。

アセアン地域の多くでは、家庭内で使用する食器や雑貨などの日用品は、自国内で作成された製品を使用する事が多かったが、AEC設立によりマーケットが拡大するため、大手製造メーカーが食器や雑貨を安価に大量生産する事が可能となる。市民としては安価に日用品が手に入るというメリットがあるが、これにより自国内で製造していた日用品の特に伝統工芸品が売れなくなる可能性がある。また、これらの伝統工芸品を製作するのは家族経営もしくは非常に小さい会社であるため、AECへの対応方法を知らない、もしくはAECが設立される事自体を知らない場合がほとんどである。

ベトナム政府では、自国の伝統工芸品を保護するために、これらの事業を行う事業者を優遇するための政策を実施することを発表しており、他国もこの動きに協調している。AEC設立によるメリットばかりが語られるが、確実にデメリットも発生するため、設立後もASEAN域内における難しい調整が行われそうである。